会話の93%は非言語情報で出来ている
「メラビアンの法則」というのをご存知ですか。
私はパントマイムの人がテレビで話しているのを聞いて初めて知ったのですが、心理学上の会話の法則だそうです。
これによると人は会話する際、言語情報を7%、聴覚情報を38%、視覚情報を55%の割合で優先させているというのです。
会話を義字通りにしか取らない我が家のふたりが、いつもとんでもない勘違いをする理由が、これだと分かりました。
言葉以外の非言語情報をまとめると93%にもなるということは、人の表情や言い方の違いが分からないふたりは、単純に言って、たったの7%しか会話を理解していないことになります。
英語はもちろん、母国語であるはずの日本語も通じないように思えたのは、私の気のせいではなく、本当に伝わっていなかったのでした。
「どうもありがとう! 助かったよ」と、感じ良く言えば、秒で終わる話
思い返すと、謎の多くはこの会話にありました。
秒で終わるはずのやり取りに何分も掛かり、話題もすり替わるので、惑わされていると仕舞いには何を話していたかさえ分からなくなる。
下の漫画は、その一例です。
勿論、さまざまな特性が絡んでいることは間違いないのですが、そもそも人(うちの場合は家族)に対して、感謝するということがないのです。
夫に対しては『一体どんな育て方をされてきたんだ』と思っていましたが、ムスメを見て『これは育て方の問題ではない』と気づきました。
ムスメに感謝することを教えると、少しづつ出来るようになってきましたが、夫は無理でした。
「ありがとう」にも言い方がある
例えば、言われて嬉しい「ありがとう」という言葉も
「不機嫌な口調と表情」を組み合わせて言うと、途端に嫌な感じになります。
親や近しい関係の人であれば、間違った言い方を注意するのは当たり前ですが、この当たり前が通用しないのが、うちの発達の人たちの特徴でした。
ふたりは人から注意されるのが何より苦手で、注意されることを攻撃と捉えているので、その度に言いがかりをつけてきたりするのでした。
彼らはグレイゾーンなので、正確にいうと、ものの言い方をまったく知らないわけではないのです。ただ単に、人によって態度を変えている。
当時、分からなかった彼らの考え方は漫画にも描きましたが、こんな感じでした。
『自分はちゃんと、ありがとうと言ったのに、相手が文句を言ってきた。(相手に伝わっているかは頭になく)文句を言われるなら、もう言うのはやめよう。 文句を言ってくる人が悪い。』
考え方に他人視点がなく、俯瞰できないので、自分の言い方が相手を不快にしていることなどが分からない。注意を攻撃と取る。激しい白黒思考もあるので、一度言わないと決めたら、絶対言わないという極論に陥るなど、いろいろあるのです。
本当は、いろいろ分からなくて困っている人なのですが、様々な特性が絡まっているので、知識と術を持って接しないと、簡単に振り回されてしまうのです。
言い方の練習
ふたりは人の顔を見て話さないので、私もよく
「話しをする時は、ちゃんと人の顔を見て話して」
と言っていましたが、実際ムスメの言い分を聞くと
『見ても分からない』
ということなのでした。
因みに、モトオは外では物凄く前のめりで人の話を聞く人で、その際、見過ぎじゃないかと思うくらい人の顔を見るのですが、それが不思議と積極的に見えてしまうのでした。
私もそれを好意と勘違いしてしまいましたが、本人は営業職ですから、恐らく人の顔を見るよう今まで散々言われて習得したのだろうと今は分かります。
そこに気持ちがあるかどうか、疲れる疲れないは別として、出来ないわけではないので、無理しない程度に工夫するしかないのです。
いつもの事ですが、以前、ムスメに感じの悪い言い方をされた時に、どういう気持ちでそれを言っているか本人に聞いたのですが、悪気はないと言うので、
「だったら、こう言った方がいいんじゃない?」
と、お手本の言い方を言って見せたのですが、指摘されたことが悔しかったのか
「知ってます!」
と、また更に嫌な言い方をされて終わりました。
思春期でしたからね。
療育は、早い方がいいと言われるのは、そういうことです。
それでも、毎日のように、ふたりからつまらないことで責められるのは耐えられませんでした。
診断がついてからは、とにかく、自覚してもらいたかったので、感情抜きのロボットになったつもりで、声をかけ続けました。
「その言い方は、嫌な言い方です。 怒ってるみたいだけど、私に八つ当たりしてるの? そうじゃないんだったら、嫌な言い方をしたことを謝ってください」
謝れた時はそのことを褒め、許した後はそれ以上言わない。
やってみて思ったのは、普段の私の話し方とは真逆で、謝ることは当たり前だと思っていたことでした。あまりにも早く謝られると、反省したと思えず、許すまでに時間を掛けていました。
私も効果的な叱り方を知らなかったのです。
いつも出来るとは限りませんが、心がけるだけで全然違ってくるものだと思います。
実際、少しづつ自分で気づいて直すようになり、会話がスムーズにいくことが増えていきました。
モトオに協力してもらい、家族を立て直したかった私は
「家族に対しても外の人にやっているように、笑顔で接して欲しい」
と、モトオにお願いしたことがありました。けれど、
「家でまでそんなことしてたら、疲れるだろう。
オレは、一体どこで休むんだ」
と言うので、
それが本当のあなたなら、私は耐えられないので、家でも他人のように振る舞ってもらえますか?
と私が言うと、その答えは
無理!
でした。
『分かってやってるのか』
と、はっきり分かったのと同時に、この人はもうダメだなと思いました。
目も耳も問題ないのに、視覚や聴覚情報が取れない不思議
この法則に関連して、一般に分かりづらいと思えるお話を最後に1つ。
目も耳も悪くないのに、視覚や聴覚の情報を取りづらいというのは、一体どういうことかと思いますよね。
これは、私の長年の疑問でもありました。
特に、モトオに関しては、記憶がよくなくなることから、
若年性認知症を疑ったこともありました。
ただそれだと、外で働けるはずがないので当てはまらず、本当に狐にでも摘まれているとしか思えませんでした。
人に言えば笑い話にしか取られず、これは経験しないと分からない、カサンドラでした。
けれど、いろいろ勉強していくと、モトオのおかしな特徴が、高次脳機能障害や認知症に共通することに気づいたのです。
その共通点とは、見えていたり、聞こえていたりしても、認識できないというものでした。視覚情報も聴覚情報もすべて脳が処理するものなので、その脳が正常に働かない場合、正しく処理されないのです。
脳梗塞などを起こした人は、よく、さっきまでなかった物が、突然目の前に現れるという不思議な体験をするそうです。
この脳の誤作動が発達障害の人の脳でも起こっていると考えられるのですが、個人差からか知りませんが、なぜかそういったことはあまり聞きませんでした。
その脳の誤作動のせいで、被害に遭ってきた私としては、不都合な事実でも隠されているかのように思えてしまうのですが、
実際、ムスメもモトオも目の前にあるものが見えていないことは、よくあることで、そういうものなのだと思っています。
コメント
コメント一覧 (2件)
想像を超える大変さ…
外で上手くやれてしまう ってところが、一見良いようですが、何よりネックですね。
グレーと判断されて周りに分かってもらえず、家族がさらに疲弊するのですね。大変勉強になります。
絵と文が読みやすくて、どえらい経験なのに悲壮感がなくて…面白く(失礼)読ませてもらっています。
きあんてぃさん、
コメントありがとうございます。素敵な感想に励まされます!
noteの方もたくさんスキを頂いて、めちゃめちゃ嬉しいです。
ありがとうございます。
支援は大変ですからね、ユーモアなしには、やっていられませんよね。
面白く読んでいただければ本望です!
きあんてぃさんの息子さんも勉強嫌いとのこと、
うちも大学生の今も嫌いだと言っていますが、
好きなことにはぼちぼち頑張れるようです。
気は抜けませんが、お互い温かく見守り頑張りましょう。^^;