【支援員日記】私をママと呼んで甘えてくるYくん

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思いは通じない

そもそも特性のある子供って、誰が誰なんだか、家族であってもその意味が分かってないと思うことがよくあります。

けれども、子供は、幼児までは本来これが当たり前。小さいうちの子育てが異次元レベルで大変なのは、子供は自分のことしか考えられないからです。

ですが、特性があるといつまで経っても人との関係性が理解できないので、その大変さはいつまでも続くというわけです。

うちのムスメとも話をしていると、そもそも母親がどういうものか分かっていないように思うことがよくあります。

愛情や思いやりが込められている言動を見事に真逆に捉え、逆恨みまでしてきたりするので、毎回驚かされ、なんとも言えない寂しい感情に襲われます

ただ、言わないと伝わらないことが分かっているので、社会的にどこがどう間違っているか、出来るだけ感情を入れずに支援員マインドで説明したりするのですが、そうすると、彼女はそれをすぐ攻撃と捉え「私だって傷つけられている!」と激昂したりするので大変なのです。

数えきれない時間を費やしてきましたが、ほとんどは特性が分かっていなかったので無駄な時間だったように思います。

彼女の話をよく聞くと、傷つけられたというその原因は、実は自分自身であることが分かっていなかったり、受け取り方が過敏過ぎたりすることが、ほとんどだったりします。

物事がよく分からないと無用に傷つくことが増え、単純に大変だなと同情しますが、自分の責任も人のせいにしたりするので、周りも大変なのです。

発達障害を理解していくと、すべては【勘違い】が問題を引き起こしていると言っても過言ではないくらいです。誤解を生まないようにするには、やはりお互い発達障害の特性をよく知ることに尽きると思います。

「先生をママと呼ぶのは、おかしい」が通じない

小1くらいの年齢だと、私のことをうっかり「ママ」と呼び間違えてしまう子がいたりします。

間違いですから、大体その瞬間、お互い「えっ!?」となる微笑ましいものですが、小1のYくんは敢えて、私をママと呼んできたのでした。Yくんは、言われなくても分かるほど落ち着きのないかなり重度と思われるADHDタイプの子でした。

「ねえ、ママー!」と言いながら、Yくんが私にまとわりついてきた時は、ためらいなく呼んできたので、ふざけているのかと思いました。

ややこ

「え、ママ!?」

Yくん

「うん、ママー!」

ややこ

「先生は、あなたのママじゃないよ。 おかしいでしょ?」

ふざけているのをたしなめたつもりでしたが…

Yくん

「えー! だって、Yね、ママのことも先生のことも大大大好きだから、ママなの。 だから、いいでしょ? ママ〜!」

そう言って抱きついてきたYくんは、もうすぐ小2ですから、いいわけがありません。

ややこ

「ダメだよ! 好きだからって言って、みんなママなんて、おかしいでしょ? 先生は先生、ママとは呼びません。」

分かったのか分かってないのか、Yくんは、その時キョトンとしていましたが、やはり分かっていませんでした。

その後も私はママと呼ばれ続け、その度に訂正を繰り返す羽目になったのです。担任の先生も私も苦笑いするしかありませんでした。

何度も繰り返すYくんに伝わる言葉を考える

彼は入学当初から「ぼく」や「おれ」などの代名詞も使うことができないでいました。

指摘されてぼくと一度は言い直すのですが、その直後に小さい子のようにファーストネーム呼びになってしまうのです。こうなると幼さが目立ち過ぎて、周りからも浮いてしまい、いじめに繋がるので直せるものは直したいのです。

こういう場合、辛抱強く声掛けをして、出来た時にすぐ褒める、で改善を試みますが、特性があると苦手なことはなかなか出来ないし、言い過ぎになってしまうのも避けたいので、どうしたらいいか、ずっと考えていました。

そして、次こそは使おうと、違う切り口を用意していました。

「ママー!」と言いながら、抱きついてきたYくんにこう言ってみました。

ややこ

「ねえ、Yくんは、先生のことをママって呼ぶけどさ、それって、Yくんのママに失礼なんじゃない?

すると、Yくんの動きが止まりました。

ややこ

「あなたのママは、あなたを命懸けで産んでくれた人なんだよ。世界に一人しかいない大切な人なのに、Yくんが先生のことも同じようにママって呼んだら、ママは悲しいんじゃないかな。」

Yくんが今までになく、じっと聞いているので、内心『やった!』と思いました。

すると、Yくんは興味が湧いたらしく、いろいろ聞いてきました。

Yくん

「なんで悲しいの?」「命がけなの?」「え、どんなふうに大変なの?」

ややこ

「そうよ、お母さんって、大変なんだから! 帰ったら、お母さんに詳しく聞いてごらん。」

Yくんは、今までになく真剣に聞いてくれ、それから、なんと私をママと呼ばなくなってくれたのでした。

発達の子が分かりやすいように言葉にしていくと、いつの間にか周りにギャラリーが増えていることがよくあります。

特性に合わせた方法は、実は定型の子供にも分かりやすくていいとよく言われますが、本当にそうです。

余談になりますが、欧米に比べると、日本は言葉にしないことが極端に多く、話の流れを読み合って主語や言葉をよく省略するので、特性がある人にとっては難しい言語です。

ただ、欧米人から見ると日本人の多くはコミュ障に見えるので、そうなると、発達障害の人は目立たなくなります。私もモトオが極端におとなしいのは、外に出たことがない日本人だからだとずっと思っていたら、ASDでしたから、日本人にはASDの特性が基本あるのかもしれません。

発達障害の人たちの為だけでなく、これから国際化が進むことを考えると、日本の学校ではもっと話をする練習をしなければいけないと思います。

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