みんなが喜んで動く英語の歌で、固まる園児二人
幼稚園の英語のワークショップに入った時のことです。
園児16人(年中&年長)が、講師から輪になって手を繋ぐよう言われると、ほとんどの子供たちが手を繋ぎ、輪を作ろうとしました。
明るく軽快な音楽が流れ出すと、何をするのだろうと園児たちは皆、ワクワク楽しそうなのですが、そんな中、おともだちと手を繋ぐことも、リズムにのることもできない園児がいました。
二人の園児は、不安げな表情をして、固まったままお互い静かに見つめ合っていました。
メイン講師もこれには違う意味で一瞬凍りついていましたが、私はいつもとちょっと違うパターンに気づき、なんだかかわいらしく思えました。
二人は静かなタイプで、妨害も癇癪もパニックもなかったので、幼稚園の支援の先生はついていませんでしたが、英語のワークショップを皆と同じようにするのは難しい感じでした。
ただ、このまま一緒にやらせようとすると先に進まないので、私はその二人をみんなの輪の外へだし、個別にゆっくり教えながらやらせてみようとしました。
一通り歌のエクササイズが終わったところで、私が一人の名札を見て「コウくんっていうのね」と声をかけると、もう一人はそれをされたくなかったのか、すぐさま自分の名札を手で隠したので、逆に話をしたそうなコウくんにメインに話しかけました。
すると、隣で見ていたその男の子もコウくんがやるなら、という感じでちょっとだけやってみたりと呼び水になってくれたりもしましたが、結局、二人とも英語への関心は薄く、集中力もあっという間に切れてしまったので、最終的には離れたところにあったソファに寝そべって、皆の様子を見たりし、時々ふらっと戻ってちょっと参加してみたりで、ワークショップは終わりました。
皆との参加は難しい二人でしたが、付かず離れずの二人には、『皆から外れているけど、一人じゃない』という連帯感のようなものがあって、なんだかほっこりさせられました。
園児二人の共通点
・集団で同時にする行動は、一般同様に苦手
・幼児英語はテンポよく歌や踊りが入るので、ついていけない発達傾向の子は多い
・上記の苦手があっても、この二人は終始穏やかで、静かに困るタイプ
皆で一緒に何かをするのが苦手なんだろうなあという様子が二人には見られ、そのせいですぐに飽きてしまっていましたが、いつもなのでしょう。困りながらも黙って静かに見つめ合う姿が、本当にかわいいのです。波長が合っているというのか、お互い似ている感覚を共有している感じは、珍しいと思いました。
二人は似ていて気が合うようなのですが、だからといって、一緒に遊ぶかといったら、やはりそれはありませんでした。近くにいるけど、それぞれ勝手なことをしていて関わり合うことはないのです。ただこの二人の場合、迷惑になるようなことをしないので安心して見ていられました。コウくんが私に何か話すと、もう一人がコウくんに被せて別の話をしたりしますが、別にそれもなんとも思っていないのでした。きっと言葉を交わさなくても、似ているだけで、安心できる存在なのではないかと思いました。
私は淡々と
「ねえ、いまコウくんの言ったこと聞いてた?」
「話す時は、一人ずつ順番に話してね」
「あれなら出来そうじゃない?やってみよう!」
などと言って、出来るだけ参加できるようにしましたが、私がずっと笑顔だったこともあってか、まあまあ言うことも聞いてくれ、懐いてくれたのでよかったです。
お陰で、英語のレッスンはあっちのサポート、こっちのサポートと行ったり来たりしなければならず、大変でしたが、いつもと違うほのぼのな感じに改めて、発達障害は色々いるなあと思いました。
「好きすぎて、食べちゃいたい!」猛烈アタック女子
小学校での支援は、なかなかそう簡単にいかない時の方が多いのですが、ここにも珍しいパターンがいるので紹介したいと思います。
今年の小1には、女子ではかなり珍しい特性の強い子がいるのですが、その子はSさんと言って、同じクラスのこれまたASD特性強めの男子Hくんのことが大好きでたまらないと言うのです。
因みに、このSさんは「ASD女子ときどきADHD、衝動性が強かったことを今更知る」の記事で、いつもケガが絶えない女の子として紹介した彼女です。
好きなのは別にいいのですが、パーソナルスペースが分からなすぎて困るというか、非常識な中年のおじさんのセクハラみたいで、見ていてハラハラするのでした。
なんたって、急にHくんに抱きついて持ち上げたりするのです。どちらも1年生にしては体格が良いので、Sさんは、持ち上げる時りきむのですが、その様子が相撲取りみたいでおかしいのです。そうかと思うと、Hくんの匂いを犬のように嗅ぎ回って、
「うーん、Hくん、いいにおい!」
と言ったり
「好きすぎて、食べちゃいたい!」
なんて言うんです。お笑いコントかと、吹き出しそうになりました。
「もおー、S さん!やりすぎじゃない?」
「Hさん、嫌だったらイヤだって言うんだよ」
と言ったりするのですが、Sさんはめげません。
「だってえ、Hくんのことが、好きなんだもーん!」
Hくんは何も言わないし、反応もないのですが、まんざらでもないようです。どちらも強烈な特性の持ち主同士、凄い組み合わせだけど、これはこれで成立するのか、と逆に感心してしまうのでした。
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